半導体量子ドット中での多電子状態の読み出しとスピン緩和現象の解析

半導体量子ドット中の多電子スピン状態の読み出し実験に対して、スピン緩和時間の理論的な解析を行った。電子格子作用と半導体中のドレッセルハウススピン軌道相互作用を考慮して、フォノンによるスピン緩和時間を評価した。計算には厳密対角化法と摂動論を用いた。その結果、量子ドット中に含まれる電子数が多いほど電子相関効果によってスピン緩和時間が急激に短くなることを明らかにした。さらに量子ドット中の全スピンの大きさに関する依存性も議論した。計算結果は実験を定性的によく説明することがわかった。H. Kiyama, K. Yoshimi, T. Kato, T. Nakajima, A. Oiwa, and S. Tarucha, Phys. Rev. Lett. 127, 086802 (2021). [Preprint: arXiv:2108.13663]