電子のスピンを駆動力とするナノモーターの提案

スピンと力学的な回転運動の変換現象である磁気回転効果を利用して、ナノスケールの物体の効率的な回転駆動機構について理論的に考察した。二層カーボンナノチューブと強磁性金属を電極とする構造を考え、電極間に電圧を印加すると、一方の電極から偏極した電子スピンがナノ回転子(ナノチューブ)に注入される。注入された電子は回転子内における磁気回転相互作用により、そのスピンの向きを反転させるとともに回転子に角運動量を受け渡し、スピンの向きが反転した電子はその偏極と同じ方向に偏極したもう一方の電極へと抜ける。この過程を繰り返す事で、回転子は角運動量を注入電子スピンより獲得し、効率的に回転運動が誘起されることを理論計算により示した。W. Izumida, R. Okuyama, K. Sato, T. Kato, and M. Matsuo, Phys. Rev. Lett. 128, 017701 (2022). [Preprint: arXiv:2106.04861].