微小複合系における量子縺れの研究には主に2つの方向性がある。1つは量子縺れ状態の生成を制御するための素子の研究で、量子コンピューターや量子暗号などを実現する鍵となる。もうひとつは、量子多体効果の形成を制御し、多体効果を量子縺れの観点から調べる研究である。本研究は後者にあたり、局所フェルミ流体状態の残留相互作用によって、2重量子ドットを流れる非線形電流中に励起された準粒子対の量子縺れ特性を調べた。とくに量子縺れの解析には電流相関についてのベルの不等式を用いて調べた。フェルミ流体中の電流中には、量子縺れの運び手が準粒子と正孔であり、さらに交換相互作用によって、準粒子のスピン1重項と3重項状態が形成する。そこで、電流によって有効的に運ばれた量子縺れ状態に注目し、ベルの不等式の局所実在論と量子論の境界を変形することで、局所フェルミ流体の量子縺れの議論を可能にした。
Rui Sakano, Akira Oguri, Yunori Nishikawa, and Eisuke Abe, Current cross-correlation in the Anderson impurity model with exchange interaction, Phys. Rev. B 97, 045127 (2018);
Rui Sakano, Akira Oguri, Yunori Nishikawa, and Eisuke Abe, Bell-state correlations of quasiparticle pairs in the nonlinear current of a local Fermi liquid, Phys. Rev. B 99, 155106 (2019)