量子コンピュータの構成単位である量子ビットの有力な実装方法として,超伝導回路を用いる方法がある.超伝導回路の作成技術と熱量測定技術の発展により,量子ビット(量子2準位系)を介して平衡状態にあるフォトン熱浴から別のフォトン熱浴への熱輸送が検証可能となりつつある.量子ビットと熱浴の結合の仕方により,オーミック熱浴・サブオーミック熱浴・スーパーオーミック熱浴の種類に分類される.これらの熱浴について,線形応答の範囲内で熱コンダクタンスを評価し,熱輸送のプロセスは「逐次トンネリング」「コトンネリング」「インコヒーレントトンネリング」のいずれかによって記述されることを明らかにした.またサブオーミック熱浴では量子相転移が生じ,熱コンダクタンスの温度依存性に量子臨界現象が現れることも示した.
Ttsuyoshi Yamamoto, Masanari Kato, Takeo Kato, and Keiji Saito, Heat transport via a local two-state system near thermal equilibrium, New J. Phys. 20, 093014 (2018). (Open Access)
Tsuyoshi Yamamoto and Takeo Kato, Quantum Critical Phenomena in Heat Transport via a Two-State System, Phys. Rev. B 98, 245412 (2018). (Prepront: arXiv:1809.03688)