電流によって誘起される超伝導ドメイン

カイラルp波超伝導体は,時間反転対称性が破れた非従来型超伝導であり,多くの理論研究が行われてきた.超伝導体中にドメイン構造をつくるが,外部パラメータによってドメイン壁を制御できると応用上有用である。本研究では,カイラルp波超伝導体の細線に外部から電流を流したときの超伝導秩序パラメータの空間的な変化を準古典理論によって理論的に考察した.熱平衡状態において複数の準安定状態が存在することを初めて示し,ドメイン壁形成によって電流-電圧特性にブランチ構造が生じうることを指摘した.この結果は,外部電流によってドメイン構造が制御できることを示唆している.また輸送特性を通して超伝導秩序パラメータの対称性についての情報が得られることも示唆している.
Thibaut Jonckheere, Takeo Kato, DC-Current Induced Domain Wall in a Chiral p-Wave Superconductor, J. Phys. Soc. Jpn. 87, 094705 (2018). (Open Access)