スピントロニクスの分野では,マイクロ波照射を使ったスピンポンピングや,温度勾配を用いたスピンゼーベック効果などによる,磁性体から金属へのスピン注入現象が重要な研究テーマの一つとなっている.通常はスピン流の平均値が議論されるが,スピン流ノイズ(平均値まわりのゆらぎの大きさ)には重要な情報が含まれる.強磁性絶縁体と金属の界面でのスピン流ノイズを定式化し,十分低温ではマグノンの担う単位磁化が計測できることや,マグノンのボーズ統計性が反映されることなどを初めて示した.ちなみに,メゾスコピック系の物理分野では電流ノイズが重要な計測技術として確立している.本研究はメゾスコピック系物理における現象・概念をスピントロニクス分野へと適用した研究となっており,2つの分野の橋渡しをする研究であるといえる.
Mamoru Matsuo, Yuichi Ohnuma, Takeo Kato, Sadamichi Maekawa, Spin current noise of the spin Seebeck effect and spin pumping, Phys. Rev. Lett. 120, 037201 (2018). (Preprint: arXiv:1711.00237)